【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
「…あ」
芝生と芝生の間の、整備された通路の近く。
そこに、大雅が居た。
そしてその隣に、真由が居る。
浴衣じゃなくて私服で、着飾らない普段のままのアイツだ。
大雅と何かを話しているらしく、横顔がチラリと見えた。
――…その瞬間。
心臓がドキドキと大きく鳴っていることに気付いた。
顔も体も全部が熱くて、呼吸が上手く出来なくて、手が震える。
…真由を見てこんなにドキドキしてるのなんて、初めてだ。
今すぐその髪に触れ、頬を撫で、抱き締めたい。
そして、キスしたい。
色んな想いを抱きながら、ゆっくりと真由に近づく。
大雅は真由に笑いかけ、真由はその大雅をきょとんと見つめてる。
…ヤバいな、俺。
真由の隣に居る大雅に、メチャクチャ嫉妬してる。
殴るつもりは無かったけれど、でも、殴っちまった方が楽かもな…。
そんなことをぼんやりと思った時、大雅が真由の耳元に顔を寄せた。
「…っ……」
その直後。
自分でもビックリするくらいの速さで、二人の間に割り込んでいた。