【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐


「…って、何言ってんだ俺」


俺は、先輩に奪われたわけじゃない。

アイツ…美咲(ミサキ)は自分から先輩のところへ行ったんだ。
だから、奪われたわけじゃない。


……でも沢良木先輩は、美咲のことを誰よりも知っていた。
美咲のことを話してる時の先輩は、いつだって良い顔してたんだよな…。


「俺が居なきゃ先輩は、もっとずっと前から美咲と上手く行ってたか…?」




……あぁ、くそっ。

なんでこういうことばっかり頭に浮かんでくるんだ。


「俺が居なければ」とか、そういうことを考えるのは止めようって思ってるのに。
なのに、なんで考えちまうんだよ。




「…先輩のことも美咲のことも、今はもうどうだっていい。
俺は俺らしく、行けばいいんだ」


そう言い聞かせながら、またフゥーッと息を吐く。




「……よし、メシ作るか」


大丈夫。
俺は俺らしく行けばいい。

真由には、メシを食い終わったら連絡しよう。


水族館でのことを謝って、それから…、話せることは話そう。
いや、真由が「知りたい」と言ったことは全部話そう。

そう決めて、ソファーから起き上がった。

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