【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
「…コイツは俺の女だぞ?」
平常を装いながら、大雅を見る。
そしてそれから、静かだけど、力強く真由の肩を抱いた。
「なんだよ龍輝、良いところだったのに」
「…んなもん知るか。
つーかお前、ここは予定の場所とちげーだろ」
「あはは、この混み様で文句言うなよ。
座れただけでもラッキーじゃん」
けらけら笑う大雅を睨みつつ、真由の体を僅かに引き寄せる。
胸のドキドキは増していたけれど、だけど、不安が消えたからか、呼吸はずいぶんと楽になっていた。
真由の近くに居ると、すげー落ち着くし、すげー安心する。
涙が出そうになるくらい、ここに居られることが嬉しい。
真由は「意味がわからない」と言った顔で俺と大雅を交互に見ている。
そんな真由に言葉を放った大雅は、笑いながら静かに立ち上がった。
「せっかくの花火大会なんだから、二人で楽しみな?」
そう言った大雅は、ひらひらと手を振ってあっという間に行ってしまった。
呆然とする真由に、すべてを話していく。
「携帯の電源切ってたこと、優と健吾がすぐ居なくなったこと、
朔也が離れて大雅がお前をここに連れてきたこと、全部仕組んでた」
「え…?」
「……まぁ、予定とはだいぶ違う場所になっちまったし、この混雑で携帯も繋がんねーからかなり焦ったけどな」