【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐


……。


その少し後、駅前に向かうと、そこには予定通り朔也が居て、その隣には大雅も居た。


「朔也さん!!」


朔也を見つけた真由は、迷うことなく朔也の懐に飛び込んでいった。
当然、朔也は凄く驚いた顔。

だけどすぐに微笑みを浮かべ、真由の髪を撫でながら何かを呟いた。


俺にはアイツの言葉は聞こえなかったけど、なんとなく想像はつく。
きっと、自分なりに“何か”を見つめ、考え、その想いを伝えたんだと思う。
真由から離れ、俺のところに来た朔也はやっぱり笑っていた。


「色々ごめん。 でももう大丈夫」

「…そっか」

「うん」


屈託の無い、晴れ晴れとした表情。
それを見つめながら、俺も微笑んだ。




…俺にはやっぱり朔也の考えはよくわからないし、朔也みたいには出来ない。
だけどそれでも、俺たちは一緒に居る。

ガキの頃から一緒に居て、勉強のこととか色々な相談とか、いつもいつも朔也に助けられてきた。

クールで頭の良いアイツと、馬鹿で間抜けな俺はまったく違うタイプの人間だけど。
だけどそれでもアイツは俺のそばに居てくれる。


「朔也」


肩にガシッと手を回し、周りには聞こえないほどの声で言う。


「マジで、ありがとう」


それを聞いた朔也は何も言わなかったけれど、それでも、凄く良い顔で笑っていた。






「おいコラ龍輝っ!!
てめぇの荷物はてめぇで持ちやがれ!!」


大雅の声が後ろから聞こえてきたけれど、気にすることなく朔也と駅の中へと進んでいく。

その後しばらくの間、大雅は何かを叫んでいたけれど。
俺も朔也も、真由でさえもそれを気にすることなく笑っていた。




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