【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
ジンクス、って…健吾が言ってたアレのことかな?
「えーっと…確か、一番最後に打ち上げられた花火が開いた時にキスすると、その二人は永遠に一緒に居られる。とかそんな風に言ってたかな」
「え、そうなんですか!?
最後まで残っとけばよかったぁ…!!
て言うか、知ってたなら教えてくださいよー…」
「あはは、そんな小っ恥ずかしいこと出来ねーだろ」
「えー…」
俺の言葉に、凄く残念そうな顔をする真由。
面識の無い大勢の人の前で何かをするとか、そういうことは嫌がるだろうと思ってたけど…、案外、そうでもないらしい。
むしろ、乗り気?
んー…、俺は昨日のキスですら、結構恥ずかしかったけどなぁ…。
女ってのは、よくわからん。
そんなことを思いながら、茹で上がったパスタをフライパンへと移し、サッと炒めていく。
そして出来上がったものを手早く皿に移し、にっこりと笑った。
「メシ出来たから食うぞー」
「わぁ…龍輝さんのご飯、久しぶりー」
「おー、これからはまたいつでも作ってやるよ」
「うんっ」
嬉しそうな顔の真由。
それを見ていると、こっちまで嬉しくなるし、楽しくもなる。
だけどすぐ、真由は何かを思い出したかのように不安そうな顔をした。
「でも、もっとずっと向こうに居るんだと思ってましたけど…、お家の方はもういいんですか?」
あー…この顔は絶対「私のせいで龍輝さんは…」とか思ってるな。
昨日のサプライズのこととか、そういうので「無理させた」って思ってるはず。
全然そんなことはないし、むしろ俺ですらも予想外の帰宅だった。
だからそれを伝えるべく、真由を見て微笑んだ。