【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
ジッと真由を見つめる。
その時、真由が少し怒った顔で俺を見た。
「た、龍輝さんこそ、何も連絡くれなかったじゃないですかっ…!」
…そりゃあ、水族館であんな態度取っちまったし…。
なんて言えばいいかわかんなかったから、連絡出来なかったんだよ。
と、そう素直に言えばいいのに…、
「…別に、連絡するようなことなんてなかったし」
…なんで俺は、こんなにひねくれた言い方をしてるんだ…。
うっわ…真由、かなり怒った顔してる。
「…龍輝さんて、いつもそうですよね」
ドンッ。と、心臓に何かがぶつかった気がした。
「…用がある時以外は絶対にメールしてきませんよね」
…初めて見る、真由の冷たい瞳。
戸惑いに、体が震える。
だけど、そんな姿を、真由に見せたくない。
「…絶対って。別にそんなことねーだろ」
精一杯の言葉を出すけれど、真由はやっぱり怒った顔で冷たい瞳をしてる。
「そりゃあ私がメールすれば返事はくれますけど。
でもそういうのじゃなくて、用が無くたって私は龍輝さんからメールしてきてもらいたいんです。
私が連絡しなきゃ龍輝さんは連絡してきてくれない。
それってなに? 私ってなんなんですか?
…龍輝さん、自分勝手過ぎますよ」
…自分勝手、か。
小さく小さく息を吐き、真由を真っ直ぐに見つめる。
「俺がそういう人間だって知ってて付き合ってんじゃねーの?」
……自分勝手な部分も含めて“俺”であり、そしてそんな“俺”と一緒に居る道を、選んでくれたんじゃないのか?
そんな思いを込めて、言うけれど。