【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
真由の顔が、泣きそうなものになる。
だけどその目は真っ直ぐで、力強くて…。
あの時と同じ…――、クリスマスの時と、同じ顔してる。
「…龍輝さんは私の全部を受け止めてくれてる。
私だって、龍輝さんの全部が知りたいよ…」
……俺の、全部…。
「………」
…俺は、馬鹿だ。
真由にいつも「全部話せ」って言ってるくせに、なんで俺は何も話してないんだ。
聞かれないから言わない。
聞かれたら答える。
そう言いながらも、真由に聞かれても何も話していない。
何やってんだ。
こんなの、ダメだ。
こんな風に真由とすれ違っていくなんて、そんなの、イヤだ。
はぁ…、小さく息を吐き出し、真由の隣に座る。
「…とりあえず、メシ食えよ」
そう促し、無言で食べ進める。
メシを食って、食い終わったらサッサと片付けて…、そして真由と話をしよう。
そう思いながら窓の外を見つめると…、外がもう真っ暗なことに気が付いた。
どうしようか?
今日はこのまま帰そうか?
いや…このまま帰すなんて、ダメだ。
このまま何も話さないなんてダメだ。
「今日、泊まっていけば」
だからそう言ったけれど。
「…今日は帰ります。
色々ごめんなさい。 話すのは、また今度でいいです」
真由が出した答えはそれだった。