【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐


……。


助手席の椅子を少しだけ倒し、小さく息を吐く。

そんな俺を横目に、窓を半分ほど開けた美奈が髪の毛をかきながら言葉を出した。


「実は少し前ね、担任の先生から電話があったの。
“最近は真面目に授業を受けていましたが、成績は下がり気味です”だって。
なんっで真面目に授業受けてるのに成績下がるわけ?」

「…んなもん知るかよ」


「彼女のことばっかり考えてるからでしょ?」

「………」


「あ、図星なんだ?
あの子でしょ、2つ上のー…えーっと、名前なんだっけ? 美咲ちゃん?」


…それ、元カノだっつーの。


「美咲は元カノ。
今付き合ってるのは真由」

「え、別れたんだ? て言うか、“真由ちゃん”って初めて聞く名前だね」


「…そうだっけ?」

「そうだよぉ。初耳でーす」


……真由のこと、言ってなかったっけ。
んー…言った気になってたのかな?




「ね、真由ちゃんってどんな子? 年上?年下?同い年?
派手な子?それとも大人しい?
龍輝の彼女になるくらいだから、やっぱり派手で強引な子かなぁ」

「あー…1つ下で、優の親友」


「優ちゃんと同い年!? じゃあ優ちゃんがキューピッドなんだね!!」

「いや、それは違…――」


「優ちゃんの親友ってことは、やっぱりちょっと派手なのかなー。
“夜露死苦”とか挨拶されたらどうしようー」

「――…聞けよコラ」


つーかなんだよ「夜露死苦」って。
アンタはいつの時代のヤンキーだ?




「で、いつ連れてくるの?」

「…はい?」


「だっていつかは結婚するでしょー?
それなら早いうちに会っておきたいじゃん」

< 28 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop