【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
だから、俺は俺に出来ることを精一杯やっていくんだ。
真由を、幸せにするために。
「あのさぁ。真由ちゃんを幸せにしたいのならさ、まずは成績落とさず頑張りなよ」
「………」
…うん、まぁ確かにそうだけど。
だからって、今ここでまたソレを言うか?
「まぁいいや、これからは私が毎日勉強教えてあげるから!」
「はいはいそりゃどうも…って、え? 毎日?」
「うん。 あのね、家族みんなで毎日を過ごすって、やっぱり大切だと思うんだ。
だからそろそろ戻ってきなよ龍輝」
……あぁ、そっか。
俺を横山家へ連れていくのは、それが理由なんだ。
家族の時間を、大切にするために…。
「美奈、悪いけど…」
「到着ー!! さぁ降りて降りてー」
「…美奈」
「いいから、降りて中入って」
「………」
美奈は真剣な顔で俺を見つめ、ポンポンと肩を叩いた。
…こんなに真剣な顔してる美奈を見るのは、初めてかもしれない。
いや…、似たような顔してるのを、昔一度だけ見た。
……あれは、親父の葬式の日。
周りがどんなに反対しても、絶対に引かなかったあの時と同じような顔してる。