【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
「美奈」
もう一度名前を呼ぶけれど、美奈は俺の想いを無視して歩き出す。
「荷物は私が運ぶから、先に入っててね」
「………」
「さ、行った行ったー!」
にっこりと笑う美奈を見つつ、小さく息を吐く。
そのまま何も言わずに車を降り、横山家の玄関へと向かった。
…美奈は俺を横山家へ置くつもりだけど、
俺は横山家に住むつもりがない。
正反対の場所に居る美奈にどう話していけばいいかわからないけれど。
でも、俺は俺の道を行く。
だからそのためにしなくちゃいけないことを、いま精一杯にやっていくんだ。
「…強引な美奈から、無事に解放されるといいけどな…」
車から荷物を下ろす美奈を見つつ、さっきと同じようにため息をついた。