【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐


…そりゃ、確かにそうだけど。
でもわざわざ泊まらなくたっていいじゃん。


「…あのさ、進路の話なんか電話で済むようなことだろ?
わざわざ帰ってくるなんて…――」

「アンタを一人前の男にするのが私の義務なの。
半端な男になっちゃったら、大和さんに顔向け出来ないでしょ!!」


……なんだそりゃ。
つーか、“半端”ってなんだよ。


「俺のどこが半端だっつーんだよ」

「全部中途半端でしょ。
勉強も運動もそこそこ出来る。けど別に誇れるようなものじゃないでしょ?」


「…そりゃあ朔也みたいに勉強で一番は取れないけど。
でも中学の時バスケで全国行ったんだけど?」

「じゃあなんで辞めちゃったのよ?
半端にやってたものをいつまでも言うなんてただの馬鹿じゃん。
ほんっとアンタは半端な男だよね。 大和さんはなんでも最後までしっかりしてたよ?」


……この野郎。言いたい放題言いやがって。


「…俺は俺なりにちゃんとやってるよ」

「ちゃんとやってるように見えないから心配してるんでしょ?
だから休みくらいウチに帰っておいでって言ってるの。
ほら、成績だって下がってきてるじゃん」


「必要無いって。ちょっと順位落としたくらいで騒ぐなよ。
進級は出来るし、卒業した後のことだって自分でちゃんと決める。
美奈が口出したって何も変わんねーよ」


俺は俺なりにちゃんとやってる。
だけど美奈はそれを認めない。

だからお互いの声は、苛立ちに満ちている。




「アンタ一人で全部出来るわけじゃないでしょ?
色々話し合って決めることも必要だよ?」

「いいから。俺はちゃんと出来るって」


「親が居なきゃ出来ないことだってあるんだってば」


「あぁもう、なんなんだよ。
ほんとの親じゃないのに偉そうにすんなよ」

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