【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
…っ……。
しまった。と思った時にはもう遅かった。
美奈の顔から表情が消え、視線が下の方へと移っていく。
直人さんは俺と美奈を交互に見つめ、僅かに息を吐いた。
「…龍輝、言い過ぎだ。
それに美奈も、龍輝に無理強いはさせるな。
龍輝、もういいから部屋に行きな?」
優しく言う直人さんだったけど、その顔は凄く寂しそうだった。
……心臓が、ギュッと締め付けられる。
あんな風に言うつもりなんてなかったんだ。
「ほんとの親じゃない」なんて、そんな風に言うつもりじゃなかったんだ…。
……美奈は紛れもなく俺の母親なのに。
なのに、なんであんな風に言っちまったんだよ…。
「…ごめん」
……美奈の顔を見ることが出来なくて、逃げるように部屋を出た。
ずっと楽しく笑っていたし、これからだってそうなるはずだった。
なのに、何やってんだよ俺。
なんであんなこと言っちまったんだよ…。
「……くそっ」
布団に潜り込み、枕を叩く。
それでも胸の痛みは取れなくて、余計にひどくなっていく。
どうすりゃいいか、わかんねぇよ…。