【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
……。
…美奈は、まだ飲んでいた。
テーブルに置かれた親父の写真を見つめ、どこか寂しそう。
「…美奈」
声をかけると、美奈はいつもと同じ顔で笑った。
「まだ起きてたの?
早く寝ないと明日起きられないよー?」
「……あのさ、さっき…あんなこと言って、ごめん」
「いいよ、気にしてない。
て言うか、私が無理言っちゃったせいだもん。 私が悪いよ」
「…そんなことないよ」
俺のことを心配してくれてる。ってわかってる。
それなのに、反発したのは俺なんだ。
…だから俺が悪い。
「…美奈のこと、本当の母親以上に想ってる。
だけど俺、美奈たちの生活の邪魔したくないんだ。
俺が居たらすげー迷惑かけて、幸せな生活をぶち壊しちゃうかもしれない。
だから俺は一人で居た方がいいと思う。
何かあればちゃんと連絡するし、ここにだって来る。それ以外のことは、ちゃんと一人でする。
だから、心配することないよ」
頭に浮かんだ言葉を一気に並べていく。
ちゃんと言えたかどうかはわからないし、ちゃんと伝わったかどうかもわからない。
だけどそれでも俺は美奈を真っ直ぐに見つめ、美奈もまた、俺を真っ直ぐに見つめていた。
「アンタは昔から、気ぃ遣ってばっかりだね」