【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
真由に連絡して会いに行って、抱き締めて…と、いつもの俺ならきっとそうする。
でも…、今更それが出来るか?
真由のことを傷つけた“俺”が、何事も無かったかのように会って話して抱き締めていいのか?
「…真由とどう話せばいいか、わからない」
傷ついてる真由をどう見ればいいのか、わかんねぇよ…。
「………」
…膝を抱え、子供のように小さくなる俺を見つめ、朔也が僅かに息を吐いた。
「…わからなくてもいい。と、俺は思う」
「え…?」
「色々考えてその場へ行っても、考えてた通りに言葉を出せる人間なんて居ない。
だったらいっそのこと、何も考えずに行けばいい。
真由と会って、思ったことを伝えればいいんじゃないかな」
……何も考えずに行って、思ったことを伝える…。
「お前はお前らしく、いつもの馬鹿龍輝で居ろよ」
「朔也…」
「真由の一番近くに居られるのは、龍輝なんだよ」