【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
明日になれば解決するだろうか?
それとも、曖昧に過ぎていくのかな…。
「ねぇ龍輝。 話は変わるけど、さっき言ってた“横山さん”って誰?」
「え?」
ふと、大雅が俺を見る。
あぁ…そういえば、美奈たちの名前とかは話してなかったっけ。
「んーっと、俺を育ててくれた女…――美奈の今の名前が横山」
「あー、前に言ってた“Aさん”。
…あのさ、ちょっとした疑問なんだけど。 その美奈さんが横山って名前なら、お前もほんとは横山さん?」
「いや、俺は笠井だよ」
「あー…よくわかんないけど、そういうのアリなんだ?」
「養子縁組をすれば横山になるだろうけど、するつもりが無いから俺は笠井のまま。
横山さんたちは俺を息子として見てくれてるし、俺も本当の両親のように思ってるけど。
でも俺は、笠井の名を無くしたくない」
親父の名前…、笠井を守っていけるのは俺だけなんだ。
だから俺は、このまま笠井 龍輝であり続ける。
「…龍輝ってさ、なんも考えてなさそうだけど意外と考えてんだね」
「は? なんじゃそりゃ」
「見直したってことだよ」
見直した、って…どこをどう見てそうなるんだ?
て言うかコイツ、今までの俺をどう見てたんだよ…。
ったく…、大雅の考えてることはさっぱりわかんねー。
「龍輝」
「ん?」
今まで黙っていた朔也が俺を見る。
「もしかして、横山さんと一緒に住むの?」