【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
「俺の気持ちを知ってるくせに、“真由を頼む”とかどうかしてる。
俺が真由を奪うとは思わないのか?」
「…その時はその時だろ。
真由がお前を選ぶのなら、俺は何も言わねーよ」
視線と視線がぶつかる。
…朔也は、俺を見たまま真っ直ぐに言った。
「…俺は、奪ったりしない」
それだけを言い、朔也は視線を逸らす。
そしてゆっくりと目を閉じ、ゆっくりと開いた時にはもう、いつもの朔也と同じ顔になっていた。
何を考えてるのかよくわからなくて、どこかつまらなそうな、無愛想ないつもの朔也だ。
「龍輝、真由には明日まで連絡しないつもり?」
「え? あー…うん、公園で話そうかな、と」
「そう、わかった」
「………」
「なんだよ?」
「…いや、別に」
……切り替えが早いっつーかなんつーか…、相変わらずわからん奴だ。
大雅曰く“それが朔ちゃん”なんだろうけど。
「ねぇねぇ、朔ちゃんが奪わないのなら、俺が真由ちゃんを奪っていい?」
「え?」
ニヤリと笑う大雅が、俺と朔也の間に入る。