【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
それぞれの、
――……。
……。
「何その酷い顔。昨日寝てないの?」
グシャグシャの髪の毛をかきながら大雅が笑う。
「…お前はあんなに飲んでたくせになんともねーの?」
「うん、全然」
「お前は相変わらず、酒が強いんだか弱いんだかわかんねーな…」
大雅はいつも誰よりも先に潰れてしまう。
だけどその翌日は、二日酔いで苦しむ俺と健吾を見ながらケロッとしてる。
体質の違いなんだろうけど、よくわからん男だ。
「少し寝れば? まだ行かないんだろ?」
「んや、一回寝たらそのまま20時間くらい寝そうだからパス。
それにシャワーも浴びたいし」
「あ、じゃあ朔ちゃんが入ってるとこに突入してくれば?」
「んなことしたらマジで殺されるっつーの」
「あははっ」
と、そんなことを話してるうちに朔也が風呂場から戻ってくる。
濡れた髪をタオルで乾かす朔也を、ジッと見る大雅。
「…何?」
「いやー、朔ちゃんって綺麗だなぁと思って。
時々こう、ムラッと来ちゃって襲いたくなるんだよね」
「………」
「あ、嘘です冗談です。
だからそんなに睨まないでください」
はぁ…、と深いため息の朔也。
それを見る大雅は謝りながらも顔は笑っていて、そのまま逃げるように部屋を出て風呂場へと行ってしまった。
「大雅は、全然変わんねーな」
くつくつと笑う俺に、朔也はいつもの呆れ顔。
「中学の時からずっとあの調子だから、俺は疲れる」
「朔也のことが好きなんだろ。
ほら、好きな子のことはいじめたくなるとか言うじゃん」
「…アホか」
嫌悪感いっぱいの顔でため息をつき、今度は朔也が俺をジッと見る。
「何、どした?」
「龍輝も変わらないな、と思って」
「…んなことねーだろ」
「いや、変わらないよ」
……俺自身は、ずいぶん変わったように思ってるけどな…。