【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐


……。


その後、大雅に電話を入れ、真由と一緒に居ることを聞いた。

…数日ぶりに、真由と会う。
横山家に行く前、メールで何気無い話をした時以来だ。


……つーか、実際に会うのは真由を家に泊めた時以来なんだよな…。
なんか、顔会わせづらい…。


と、そう思いながらも時間は止まることなく進んでいき…、


「龍輝」


…大雅と真由が、公園に到着した。




「…よぉ、元気そうだな」


そう言いながら、なんとか笑顔を作る。


…元気そう。
口ではそう言ったけど、真由は全然元気そうじゃない。

ずっと泣いてたんだろうな。ってわかるくらい、目の周りが赤くなっている。




「…すぐ駆けつけてやれなくて、ごめんな」


俺が横山家に居た時、真由は一人で苦しんでいた。
それを思うと、痛みばかりが心臓を突く。


「………」

「………」


俺の言葉に真由は何も言わず、また、俺もそれ以上は言わなかった。


ジリジリと照りつける太陽と、生ぬるい風。
みんみん蝉がそこら中で鳴いていて、余計暑く感じさせる。




……言葉が、見つからない。

真由を前にしたら、何かは言えると思ってた。
でも、何も見つからない。


真由は、俺のことをどう思ってるだろう?
俺に聞きたいこととか、きっといっぱいあるよな…。


なのに聞いてこないのは、俺の言葉を待っているから、か…?




「………」

「………」


…俺の隣に座った真由は、ずっと何も言わない。
視線を合わせることもなく、ただそこに座っている。


…このままじゃ、ダメだよな。

真由をこのままここに何時間も置いとくわけにはいかないし、沢良木 涼太だってあのまま放っとけない。




「…ちょっと行ってくるわ」

「え…? 行く、って…」


「アイツんとこ」


このままここに居たって何も変わらない。
だったら、自分から変えに行くしかねーよな。




「龍輝、一緒に行って殴んの手伝おーか?」


にっこりと笑う大雅。
それに苦笑いしつつ、首を横に振る。


「別に、殴るわけじゃねーから」


……そう、殴るわけじゃない。
まぁ、最悪の場合は殴るかもしれねーけど。

でも、殴ったって解決しないよな、絶対。


沢良木 涼太と話す。
上手く話せるかはわかんねーけど、でも、今出来るのはそれだけだ。




後ろ手に手を振り、沢良木の元へと向かう。

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