【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐


空を見上げている沢良木。
その斜め後ろの、ちょうど死角になる位置から近づき、隣に座る。


「えっ…?」


当然の、驚いた顔。
それと同時に、沢良木は僅かに体を強張らせた。


「…別になんもしねーよ」


さっきまでのコイツと同じように空を眺め、言葉を出していく。


「お前ってさ、沢良木 琉(リュウ)さんの関係者?」

「…っ……な、なんで琉のこと…――」

「俺、去年はいつもあの人と一緒に居たんだよね。
同じ学校で、弟みたいに可愛がってもらってたんだけど。
俺のこと、先輩から何も聞いてない?」


「――…まさか、笠井、龍輝…?」

「うん、当たり。
水族館の時に気付いたかどうかは知らないけど、真由と付き合ってんのは俺。
ついでに言えば、いま真由はこの公園に来てるぞ」


そう言った時、沢良木は凄く凄く驚いた顔をした。
そして僅かに視線を動かし、真由が居ることを確認したらしい。


視線が俺に戻ってきた時、沢良木は小さく小さく聞いてきた。




「…俺を、殺しに来たんですか」


唇をほとんど動かさず、真由に悟られないように言っているけれど、沢良木の声は震えていて、顔も恐怖に怯えている。

尋常じゃない怯え方。
…多分先輩が俺のことを「アイツはかなりヤバイ」とか話してたんだろうなぁ…。


「…別になんもしねーよ。って言っただろ」

「だけど、“あの”笠井 龍輝だろ…?」


「どの笠井 龍輝だよ。つーか呼び捨てすんなって」

「あっ…、す、すみません…」


「…まぁいいけど。
でも、俺からすれば沢良木先輩の方が喧嘩っ早くて怖かったけどな」


小さな笑みを浮かべた後、ふっと息を吐き…、それから、静かに問う。


「お前は、マジで真由を想ってる?」

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