【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
「………」
「………」
暑い日差しの中で、沢良木との視線がぶつかる。
…その数秒後、沢良木の視線が真由たちの方へと移動する。
そして、ふっと息を吐いた後に立ち上がり、俺を見て僅かに頭を下げた。
「色々すみませんでした。
俺はもう、真由の前には現れません。
笠井さんの気持ちが聞けてよかったです。
俺なんかが偉そうに言っていいことじゃないですけど…、真由のこと、幸せにしてやってください」
ふんわりと、優しい顔で笑う沢良木。
…真由が惚れていただろう笑顔。
そして、どことなく沢良木先輩に似た笑顔…。
沢良木はそれ以上何も言わず、振り返ることなく歩いていった。
…俺は一人ベンチに座ったまま、小さくなっていくその後ろ姿をただただ見つめていた。