【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
…大雅たちの姿が見えなくなった後、不安そうな顔のままの真由が隣に来る。
「沢良木 涼太って、やっぱり沢良木先輩の親戚だった」
まずはそれを伝え、その後に…――、
「アイツとやり直してみれば?」
――…そっと静かに、そう言った。
もちろん、本心じゃない。
真由が「わかりました」と言って、俺の元を去っていく可能性もある。
だけどそれでも、真由の想いが知りたくて、真由の口からその想いを言ってもらいたかった。
「アイツとやり直すのは、やっぱり嫌?」
そう聞いた時、真由は真っ直ぐに俺を見て即座に答えた。
「嫌です」
…迷いの無い、力強い言葉。
「…俺と離れて、アイツと居た方が幸せかもよ?」
ヒドイ言葉を、続ける。
…真由はそんな俺を見て、凄く凄く悲しそうな顔をした。
涙を必死に堪え、俺の想いを探り、そして応えようとする瞳…。
俺が「沢良木のところへ行け」って言ったら、コイツはきっと行ってしまうんだろうな…。
自分の「嫌だ」という気持ちを押し殺し、俺の“想い”を優先して、気遣って、また一人で泣いて…。
…そんなの、ダメに決まってる。
「やっぱり、俺たち無理だよな」
…真由と離れて過ごすなんて、そんなの無理だ。
俺の隣に真由が居て、そして二人で笑って過ごしていく。
それ以外のものなんて、あり得るはずがない。