【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
“今”
――……。
……。
その後。
真由とともにマンションへと戻り、少しだけ話をしたあと、俺はまた横山家へと向かった。
……。
「ただいま」
家に入ると、すぐに美奈がやって来た。
「おかえりー。
昨日何があったの? 詳しく聞かせてよー」
「真由の元カレとバトル」
「え、何それ面白そう!!」
…って、人のゴタゴタに目ぇ輝かせるなっつーの。
まぁ、美奈らしいっちゃ美奈らしいけど。
「もう解決したから大丈夫だよ」
「喧嘩じゃ負けなしだもん、当然勝ったよね?」
「さぁな〜」
「え、何よそれー。 ちゃんと話してよー」
「んなもん、言うわけないだろ?」
にっこりと笑い、さらりと美奈をかわす。
美奈はしばらくの間まとわりついてきてたけど、まったく語らない俺にため息をつき、それ以上は聞いてこなかった。
だけど直人さん曰く、「いじけて俺に八つ当たりしてくる」らしい。
「お前が何も言わないせいなのに、何故か俺のメシが少ないし酒も無い」
と、ため息をつく直人さん。
「んーっと、ご愁傷さまです」
ここでもまたにっこりと笑ってみせると、直人さんは冷酷な笑みで俺の頭を容赦なく叩いてきた。
「お前のせいなのに他人事(ひとごと)みたいに言うとはいい度胸だな?」
「うっわ、暴力反対!
これ以上馬鹿になったらどうすんだよ?」
「自分で自分を馬鹿だって理解してるうちは、馬鹿じゃないから大丈夫だろ」
「だからって、殴っていいわけないだろ」
そんなやり取りをしながらも、直人さんは容赦なく頭を叩いてきて、俺も負けじと腹にパンチを食らわす。
まぁ、オッサン相手に本気は出さないけどね。