【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
「龍輝と二人で話したいなと思って来た」
「…だろうな」
コイツがわざわざここに来る理由なんて、真由のこと以外には無い。
タイミング的に見ても、それ以外を考えることすら出来ない。
「さっき真由と電話した。
で、お前のこと色々聞いて…、かなり不安定だなって知ってる」
「あー…そっか」
苦笑しながら視線を外した朔也は、どこか困ったように髪をかき上げた。
「さっき大雅からメールがあって、“龍輝と真由ちゃんを困らせるな”って叱られた。
俺の想いのせいで戸惑ってる真由のこと、俺自身見たくないって思ってるんだけど…俺は、大雅みたいに上手く隠せない」
「大雅みたい、って…」
「アイツは真由のことが好き。だけどいつも上手に隠してる。
アイツはアイツで苦しい思いをしてるだろうけど、それを一切見せないで笑ってる。
俺はあんな風には出来ないし、するつもりもないけど。
でも、アイツのことは素直に凄いって思う」
……朔也は、大雅の想いを知っていたんだ。
いつも何だかんだと言い合ってる朔也と大雅だけど、でも一番一緒に居る二人、なんだよな…。
「…俺が大雅みたいな人間なら、龍輝のことも真由のことも、傷つけずに済んだと思う」
寂しそうな声と笑顔。
そのままの状態で、朔也は静かに言葉を続けた。
「二人から離れた方が、いいのかもしれない」