【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
こんな風に言うつもりじゃなかった。
なのに止まんねぇし、止めらんねぇ…。
「…マジで、なんもねぇから」
…真由が怯えてる。
それがわかってるのに、何も言葉が出てこない。
先輩や元カノの笑顔が頭に浮かび、それに比例するように“俺”は荒れていく。
もう、今日はダメだ。
…他人事(ひとごと)のように息を吐き、近くに居る真由を見ることなく歩き続けた。
……。
…その後、俺と真由は会話らしい会話もせずに二人の時間を終えた。
大雅と朔也の馬鹿みたいなやり取りに、なんとか笑うことは出来たけど。
でも、真由を見ることも話しかけることも出来なかった。
あんな態度を取ってしまったのに、今更「普通」に笑うなんて無理だ。
……真由は俺をどう見てる? どう思ってる?
「……くそっ…」
…何もわからないままに、みんなの少し後ろで小さく小さく言葉を吐いた。