【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
…言われてみりゃあ、そうかもな…。
勉強ってのは、苦しくて嫌なものばかりで、嫌々やってるのがほとんどだ。
好きなこと…、例えばバスケのことなら、難しいフォーメーションや面倒なルールだってすぐに覚えられる。
好きなことなら、いくらだってやっていられる。
…朔也は、勉強が好きなのかな?
だから色々なことを覚えられるし、成績もそれに反映してるのかもしれない。
「…お前って、勉強すんのが好きなの?」
そう聞いてみたら、朔也はまたにっこりと笑った。
「嫌いだよ」
…え?
「嫌いだけど、俺には他に出来るものが無かった。
だからがむしゃらにやってたら、いつの間にかトップになってた。
ひらめきやセンス。俺にはそういうものが他人(ひと)よりもあるのかもしれない」
「…なんだそりゃ。つーか、さっぱり意味わからん」
……コイツって、やっぱり謎な奴だ。
「あーもう俺は寝る。
お前の話を聞いてたら頭痛くなってきた」
「単純な話だったと思うけど?」
「はいはい、どうせ俺は単純な話もわからん馬鹿ですよー。
頭の良いお前には一生勝てん。以上!!」
プリントを片付け、あくびをしながら頭を掻く。
「じゃあな、おやすみー」
ひらひらと手を振る俺に、朔也は「おやすみ」と笑い、手を振り返した。