【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
“相談役”が俺から朔也に代わったため、健吾の声を聞くのは本当に久しぶりだ。
『花火大会でのサプライズ、すげー良い考えじゃん。
俺も来年辺り真似させてもらうわ!!』
「“あの”優は、二番煎じじゃ喜ばないと思うけどな?」
『あはは、そうかも』
電話の向こうで苦笑してるらしい健吾。
それでも『参考にしとくよ』と悠々と言葉を続けた。
『そう言えば、花火大会のジンクスって知ってるか?』
カチカチッとライターの火をつける音がし、その喋り方も「口に何かをくわえている」感じに変わる。
電話中、健吾は必ずタバコに火をつける。
しばらく話していなかったけど、それは以前と変わらないらしい。
昔なら、そのタイミングで俺もタバコを口にくわえているけれど、今は麦茶を飲むだけだ。
人間、変わろうと思えば変わるもんだな。なんて思いながら、健吾の問いに問いで答える。
「何かあんの?」
『んーっと、よくある話だけど、一番最後に打ち上げられた花火が開いた時に恋人とキスすると、その二人は永遠に一緒に居られる。とかなんとか』
「…確かによく聞く話だなぁ。 で?優と試してみんの?」
『無理。俺はお前と違って群衆の中でキスなんか出来ねーよ』
「健吾が無理でも、優はしたいんじゃねーの?」
『イエス、そこが問題でさぁ、お嬢様はする気満々なんだよ。
ジンクスに頼んなくたって、一生一緒に居ると思うんだけどなぁ』
「アイツは、恋愛のジンクス、っつーの? そういうのすげー好きだからな」
まぁ、叶ったところなんて見たことないけどね。