略奪愛の結末
篤朗の前に立って私の悪魔が囁いている。


悔しい
篤朗は私を愛してるのに……
どうしてマリと一緒にならなければダメなの?
篤朗を愛してる……篤朗は私のもの……。


そして

私は篤朗に子供を
作ってあげられないんだもの マリから生まれる子は
篤朗がいつも夢として語る子供。
きれいな思い出として篤朗を解放してあげなさい。
今まで私が 築いてきた姉としての美談を
美談のまま終わらせる。


まったく違う二つの思いの中央で
震えている……。

篤朗が何度も自分を悔いて 頭を下げる。

マリを抱いたことは許せないことだけど
篤朗に対してはもう
恨みや軽蔑よりも


愛してるという気持ちの方が大きくて


私の悪がどんどん成長してきていた。

いいよね……。
今日で本当に終わりなんだもん。

体も心ももう 篤朗を求めて 溶けてしまいそうだった。

篤朗の懺悔の涙が 体を濡らすたび
愛おしくて離したくない衝動にかられる。

さっきまでは
マリを幸せにしてね
私のことは忘れて

そう言いながら 篤朗の体に触れると

「忘れないで…。」切ないくらいあふれ出す言葉を
もうさえぎることはできなかった。


私の中で一つの決心が決まった瞬間だった。


今は
今だけは 篤朗と一つになって…
何もかも忘れたい……。
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