略奪愛の結末
この間はあまり乗り気でなかった篤朗だった。


「ね…立ち合いしてくれるよね?」

一瞬困ったような顔をしたけど

「うん……。」

「赤ちゃんはママ孝行だね…。」

痛みが襲ってきて 会話も切れ切れになる。

看護師さんが入ってきて

「おとうさん 腰優しくさすってあげて
それだけでもずいぶん違うんですよ。」と言った。


痛みに悶絶する私の腰を
篤朗が優しく撫ぜる。

「痛いよ~~痛いよ……。」

「うん 痛いな ごめん……。」

今まで距離のあった二人の距離が
縮んだ気がした。


「好きなの 篤朗……。」

どさくさにまぎれて 篤朗を責めたてる。
今まで曖昧にされていた言葉も 今なら勢いで
何でも言えるし

篤朗を縛りつけることもできる。

「愛してるの…ずっとずっと……。」

「わかってる…。」

こんなに苦しんでいる私の願いを聞いてよ。
ここで篤朗を縛り付けるんだ

必死な私がいた。

「愛して…私と赤ちゃん……愛してくれるよね?」

篤朗は私の手を握って

「わかってるって。」と言った。

「好きで好きで苦しいの……。イヤな女になっても
篤朗と一緒にいたかったの……。」

痛みの中で冷静な自分がいる。
篤朗を縛り付けるのは 今しかないと・・・・。
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