略奪愛の結末
分娩室を出ると 篤朗の両親が笑顔で立っていた。

「お疲れ様 よく頑張ったわね。」
ママはハンカチで 涙を拭いた。

「ママ 赤ちゃん会ってくれた?」

「うん いい赤ちゃんだったわ。
元気にそしてコロコロと太って……
この細い体で よくあんな立派な赤ちゃん育てて
産んでくれたわ。」

「篤朗の赤ちゃんだもん。
大切に大切にしてきたの。」

篤朗は笑顔で立っていた。

「おまえも父親になったんだ。
しっかり家族を守って行けよ。」

パパの威厳のある声が胸にしみた。

「うん。」

篤朗の言葉が何よりのプレゼントだった。

病室に戻ってしばらくしたら篤朗が入ってきた。

「新生児室でも 泣いてた。」

「ほんと?よく泣く子なのかな。」

「お腹すいてるのかもな。俺がそうだったらしい。」

「篤朗みたいに おっきくなるんだ。」

「だといいけどね。」


篤朗の手を握り締めてキスをした。

「篤朗がいてくれたから いいお産ができた。
ありがとう。」

「女の人が大変な思いで子供を産むのを
ちゃんと知ったよ。
かあさんにも力説されたけど……
お疲れ様…今日はゆっくり寝ろよ。」

「篤朗。」

「ん?」

「キスして……。」

「ここで?」
私はうなづいた。

辺りを確認して篤朗の冷たい唇を感じた。

篤朗 この日を忘れないで
そしたらきっと 私たち 本当の家族になれるから。

篤朗・・・・愛してる・・・・。
< 210 / 365 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop