略奪愛の結末
飛勇はそのサッカースクールの子たちより
優れているのは私にもよくわかった。

ゴールを決めるたびに私たちの方を見て
大きく手を振った。

ボールが飛勇を探してついてくる錯覚をするくらい
飛勇がボールに触れている時間が多かった。

コーチが一人の真っ黒な男の人を連れてきて

「こちら この間話したチームの監督で・・・・」

飛勇をぜひ うちで預かりたいと言った。
才能は早いうちにしかるべき指導で伸ばしたほうがいい
スクールがあるのでぜひ一度体験してほしいと
名刺を篤朗に渡した。

「スカウトか~すげーな
父親だって叶えられなかった夢が 飛勇はもしかしたら…。」

「篤朗の夢?」

「俺 サッカー選手だった 小学校の高学年まで。」

「そうなんだ。私は運動はあんまり好きじゃなくて…
苦手だったんだけど 飛勇はよかった。
きっと素敵な子になるね。優しくて元気で
篤朗のような心の広い人になる。」

「俺が心広いって?」

「広いよ。この毎日を受け入れてくれてる。
できたことを恨んだろう飛勇を こんなに大切にしてくれて
それを武器にしている女を受け入れてきた。」

「最近ほんとにどうしたんだ?
今さら昔のこと掘り返したって…こうやって
生活しているだろ?マリが何を望んでるのかわからない。」

「してあげてるって感じがイヤなの。
我慢してあげてる 幸せにしてあげてる
篤朗は他人事だから。優しさは時には罪だよ。」

篤朗が大きなため息をついた。

「じゃあさ これ以上何を求めるの?
俺はどうしたらいいの?」

「何もわかってない……。」

そう いまさら何をわかってもらおうとしてる?
いつまでも篤朗が忘れない姉の亡霊が見える。
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