略奪愛の結末
「ひさしぶり。」そこにいるのはずっと見てきた
屈託のない笑顔で私を見るマリだった。

「ど…どうしてここが?」

「きっと真紀さん知ってるって思ってたの。
そしたらいるじゃん…卓ちゃん…卓ちゃんってけっこう
ガードが脆いんだよ。」

いたいた……逸見……。

「素敵なお店ね。」

「もうすぐ閉店だから待っててくれる?」

「うん…大丈夫
ここなら見たいものがたくさんあるわ。
ちょうどキッチンの窓にカフェカーテンが欲しかったんだ。」

あまりに突然の出来事に
平静さを保つのが大変だった。

「これは新商品なのよ。可愛いでしょ?」

「うん。」


痩せてしまったマリの顔が痛々しくて
思わず抱きしめてしまった。

「おねえちゃん……ごめんね。
親不孝じゃなくて 姉不幸だね私……。」

「会いたかった……。
だけどずっと怖かったの……。
あなたたちの幸せに水を差すなら会わない方がいいって
ずっと我慢してきて…あれから初めて
札幌に戻ってきたわ。」

「いいんだよ おねえちゃんの故郷なんだから。
って…私が悪いんだよね。」

「マリ……。」


私は両親の葬式の時 こうやってマリを抱きしめた。

おねえちゃんがいるから・・・
これからずっと一緒だからね

私はそう言い続けていたんだ
途方にくれてパニックになりそうだった自分を
マリが支えてくれた。

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