略奪愛の結末
「想像以上だったの・・・・。
治らないのに受ける治療が・・・・。
ただ命をつなぐために……二人の前では弱音は
吐きたくないから 必死に前向きだけど
次はもう無理かもしれない・・・・。」


マリが切羽つまっているのは理解できるけど

「無理なんて言わないで。
マリが守るべきものをちゃんと守りぬけるように
辛くても立ち向かわなきゃ…。」

「だって…治らないんだよ…。
頑張ったところで もう見えてるんだもの。
私はこれからどんどん絶望して…弱って…
苦しんでボロボロになる……自分のことで
精一杯で何もしてあげられなくなるもの。
飛勇にしてあげられることも…何もできなくなる…。」


「しっかりしなさい。
あなたが産んだんでしょう?」


マリの顔はぐしゃぐしゃになっていた。

「こんな…こんなはずじゃなかったもん…。
もっともっと飛勇のそばで・・・飛勇の成長を
篤朗と一緒に楽しめるはずだったのに
篤朗が愛してくれなくても
飛勇の親として生まれる絆が嬉しいって
気づいたのに…こんなことになっちゃって……
私がしてきたことがあんまり悪くて
死神が迎えに来てしまった……。」

「マリ……飛勇に残せるものはたくさんあるわ。
私に頼らないで……病気と向き合う力になる。」


鬼になるしかなかった。

「おねえちゃん 助けてよ・・・・。
情けない姿 二人には見せたくないの…。」


「今さら甘えないで マリ。
タクシー呼ぶから 帰りなさい。
待ってるでしょう?」

マリのしがみつく手が離れた。
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