略奪愛の結末

立ち上がった私と暗闇の中　目が合った篤朗
二人の間に無言の時が止まる。

何も交わさなくても　お互いを思いやる気持ちは
あふれ出そうだった。

やっぱり篤朗を忘れられてない

胸の痛みがある。


我に返ったように　篤朗が歩み寄った。

「マリ　マリ」

マリは軽くいびきまでかいている。


「心配させやがって……。」


ダウンを着たマリを見て

「あたたかそうだから　借りてもいい？」と言った。

「使って…今あったまったと思うから……。」


って私が寒いんだけど


その時だった篤朗が　コートを脱いで私にかけてくれた。

「あ　いいよいいよ。車に戻ればあったかいし…。」

「車まで使って。」

「ありがとう。」

篤朗の香水の香りがした。

「マリ…マリ　帰るぞ。」

軽々と篤朗がマリを抱き上げた。


「篤朗　どうしたの？あれ・・・・？
おねえちゃんが…いたんだよ……会えた？」

私は篤朗に手を振っていないと言ってと合図した。


「夢見たのか？人騒がせだぞ。」

「どうしてわかったの？」


「わかるさ・・・・。」

「ごめんね。死んじゃいたかったの。
もう治療もしないから。」

そういうと篤朗に抱きついた。

「マリ？マリ……寝たのか？都合のいいやつだな。」

マリのいびきは　静かな霊園に響き渡った。


私は後ろから足元を照らしながら静かに歩いた。

篤朗の歩幅に合せて　跳ぶように・・・・・・。
篤朗が今　抱きしめるのはやっぱりマリ・・・・。

あたりまえだけど　胸が痛む。