略奪愛の結末
せっかく作ってくれたごちそうも
結局私はあまり食べられなかった。

みんなが気を使ってくれるのが申し訳なかった。

「ママ 少し食べなさいと……
ダイエットしてるの?」飛勇が頬をいっぱいにしていった。

「うん ダイエットしてんの。」

「だめだよ。もう痩せちゃ。」

飛勇の言葉はやっぱり浸みる。
この小さい子にどう話せば 伝わるだろうか。


ママはもうすぐいなくなっちゃうんだよ。
飛勇はパパの言うこと ちゃんと聞いて大きくなるんだよ。
そしてね…パパとおばちゃんの恋を応援してほしい
飛勇にキューピットになってもらいたい…。


5歳の子にこんなわけわかんないこと言っても無理かな。

突然の吐き気に 平静を装いながら席を立ち
トイレにこもった。


先生が言ったように吐血も始まってきた。

真っ赤な血がトイレを染める。



「ハァ・・・ハァ…。」助けて…気が狂いそう。
こんなに血が出て大丈夫なのか 自分・・・・。

でも もう手術もできないと余命をつけられた。


死ぬのを待つだけ
治療と言えば  あの苦しい抗がん剤と放射線治療


それで余命の引き伸ばしをするだけで
苦しみは続くだけ


ティッシュで口を拭いた。


もう時間がないってことはよくわかっていた。


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