略奪愛の結末
篤朗がお茶を出して座った。

「あのね…転院することにしたの。」

「転院って?」篤朗が聞き返した。

「もう治療はしない。ホスピスに行くことに決めたの。
もうしばらく迷惑かけちゃうけどお願いします。」

「治療しないってどういうこと?」

「もう無駄なことしない。お金もめちゃめちゃかかって
それに効き目もないし……どうせ先が決まってるなら
少しでも苦しみが緩和される医療を受けたいから……
ホスピスをしている病院に転院することにした。」

「することにしたって…一人で決めたのか?」

「うん…。ごめんね。
自分で決めたかったんだ。」

「治療をしないって…抗がん剤をやめるってことか?」

「もう時間がないなら せめて
安らかに過ごせたらって……今はもう
一つ大切なことを片付けたら 自分だけのことを
心配してやりたいの。」

転院先の病院のパンフレットを出すと
篤朗は驚いた顔をした。

「地方なのか?何で?」

「すごく素敵な風景でしょ?窓から毎日こんな
風景見られたら幸せだと思って。」

「これじゃ行くのも大変なんだぞ。
わかってるのか?」篤朗は怒りだした。

姉もそのパンフレットを見て驚いた顔をした。

「何を考えてんだよ。」

「ごめん…あっちに行ったら……来るのはお迎えの時だけでいい。」

篤朗と姉の驚いた顔に罪悪感だった。

「迎えにだけ来て……
それまでは 絶対に来ないでほしい。
電話だけ…電話だけで充分 飛勇の声聞かせて。」

必死に笑顔を作る。
絶対に 泣かない・・・・。
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