略奪愛の結末
さよなら またいつか
「コーヒーでも入れるね。」

メグが 立ち上がった。

俺はマリの頬を撫ぜて立ち上がった。

「夜中あんなに辛そうだったのに・・・・
昼間は穏やかだったな。」

「このままよくなってくれたらいいのに。」
メグは肩を震わせた。

コーヒーの香りが部屋に広がる。

「篤朗がコーヒー好きだから
毎朝 こうやってマリはコーヒーを入れたんだろうね。」

「うん。」

毎朝 コーヒーを入れてくれて
今日の豆は どこだの ここだの 香りがどうなの

マリはそう話しかけていた。
だけど俺はその話さえも うっとおしく マリと
向き合うことさえ避けていた。

涙があふれてきた。

「もっと もっとちゃんと話を聞いてやればよかった。
マリが手さぐりで俺に近づいてくる様子が
わかってたのに わざとに突き放したり……
悲しそうな顔をするのを確認しては 喜んでいた。
おまえのせいで…って……。」

「篤朗…もうそんなこと思い出さないで。
マリが全部幸せだったって言ってくれたんだから。」

「俺のせいだよ。
マリをあんな病気にしたのも…もっともっと
メグに言われたように大切に愛してあげてたら……。
俺はさ ずっとマリに嫉妬してたんだ。
メグが誰よりも優先するマリに…バカだろ?
俺との未来をあきらめてまで
マリを幸せにしてねって言ったメグに絶望した。」

「みんな傷つきながら生きてきてしまったのね。
私たち三人……どれが正解だったって言えないけど
でもね…私はマリも篤朗も大切だったから…
幸せになってほしかった。
心の中にはいろいろあったけど……
マリが幸せって言ってたあの顔を見た時
これでよかったんだなって 思ったよ。」

涙がコーヒーに落ちて行った。
< 350 / 365 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop