略奪愛の結末
飛勇に次にマリに会う時は 骨になっていることを
説明すると 飛勇はまた泣きだした。

幼心にショックなことが多かった。

「ママを忘れないでおこうね。
強いママだったな。俺も飛勇も負けないように
頑張ろうな。ママがほめてくれるからさ。」

「うん。」

飛勇は苦手な箸を使って最後までマリの
骨を拾い上げた。

その姿に胸が詰まる思いだった。

顔を余熱で真っ赤にしながら
必死に拾っては 箱に入れた。

「やけどするぞ。」

そう言ってやっと 離れさせた。

小さな飛勇は その小さな心の中で
マリの死を必死に受け止めようとしていた。


マリが残そうとしたものは
飛勇にはしっかり届いていると思った。

死を受け止める時間もなく ただただ忙しく
しなきゃならないことを済ませて
葬儀場から家に移って 祭壇を花で飾って
みんなが帰って 飛勇が疲れ果てて眠って


やっと一人になったとき 悲しみが押し寄せてきた。


俺は骨になったマリを抱きしめて
「マリ…マリ…ごめんな…。」


そう言い続けて泣いた。
泣いても泣いても 涙は枯れることがない。

遺影のマリは 飛勇を産んで
幸せ一杯微笑む一枚だった。

俺はこの時 マリをどう思っていたか
そう考えると 罪悪感でいっぱいになった。

今さら遅い後悔が 押し寄せていた。
< 356 / 365 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop