略奪愛の結末

「一年……一年待ってほしいの。」

メグはそう言った。

「せめて一年　けじめをつけたいの。」

メグは遺影に手を合わせる。

「その間は私が飛勇を預かるから。
篤朗は仕事に集中して。飛勇にもちゃんと話てみる。
マリの遺言は守りたいと思っているけど
私と篤朗がまた　昔のようになるのは
もう少しお互いに時間が必要だと思う……。」

「そうだね。俺が少し無神経だった。
飛勇が一緒に行くって張り切ったから
何だか急いでしまった　ごめん。」

「そんなことないよ。
ただ私と篤朗が一緒にやっていけるかは
時間が必要だと思うの。
そうでしょ？篤朗が一番わかってるでしょ？」

メグに見透かさらてる気がして　恥ずかしくなった。

「お互いにマリを想う時間とこれからの自分たちに
向き合う時間が一年でどうなるかはっきりは
わからないけれど……。」

そうだった
いくら心の底にお互いが住み着いていた年月であっても
これから先　家族として暮らせるか
何より夫婦になれるかは　別の話だった。


「転勤なんて話があって
かなり動揺しちゃって　ほんと無神経だな。」

「ううん。マリの遺言を受け入れてくれたんでしょ。
マリは強引だから…うふふ……。」

メグは笑った。

「マリ　篤朗はちゃんと約束守ってくれようとしたよ。
ただ時間をちょうだいね。今　篤朗の頭の中は
仕事のことと　そして心の中はマリでいっぱいなんだ。
マリのことをちゃんとできるまでは　
私は自信がないんだ……。急がないでいいよね。」

メグはしばらく遺影を見つめていた。