略奪愛の結末
仕事で大口の契約を成功させた。
相手先は気難しい人で 担当者になると大変な
思いをするらしく 今回俺がその担当者になったわけで
まぁ気難しい人だった。

メグにもちょっと愚痴を言ったりしながら
そのたびに

「篤朗の良さを知ってくれれば きっと
上手くいくよ。篤朗らしく誠実でまっすぐに
対応してれば 大丈夫。」と応援してくれた。

その言葉に奮起して今回 会社もびっくりする契約になった。

回りからの評価は一気に上がって
こういうのってけっこういいことだな~と思った。


ある日 携帯が鳴る 実家からだった。

長く病院に入っていた祖父が亡くなったという。
仕事の片づけをして 札幌に向かう。
今回は仕事が忙しいからゆっくりはしていられない。
なんとか短くてもいいから メグに会えるといいなと
期待をしながら久しぶりの実家の前に立つ。

いい思い出のない家だった。
優秀な兄貴に存在をすっかり消された俺

両親も死んだ祖父母も
兄をとてもかわいがっていた。

「篤朗 少し頑張らないと。
おにいちゃんを見習いなさい。」

口ぐちにそう言われながら 俺は育った。

敷居の高い家
だけどもう劣等感を持つ必要はない。
俺はあの頃とは違う。

堂々と顔をあげて 今の俺は
愛する女を手に入れて 仕事も順調なんだ。
卑屈になる必要なんかどこにもない。

大きく深呼吸して 家の玄関を開けた。
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