海宝堂〜海の皇女〜
プロローグ
ここは、ある島の大きな図書館の閲覧室…

広い机を囲んで、3人の男女が押し合いへし合い、一冊の本を覗き込んでいた。

「ちょっと、リュート、押さないの。」

「俺も神殿見てえ…ニーナばっかりずりぃぞ。」

「そんなこと言っても、あんたじゃ話が先に進まない…痛いっ!足、踏まないでっ!」

「ニーナ、静かにしろ。
リュート、邪魔をするな。」

小声で繰り広げられた攻防戦はガルの一言で終わった。

「ごめん……ガル、その本は借りれないからね。」

「…う…」

返すあてもないくせに持っていた、料理の本を棚に戻すガルにため息をついて、ニーナは本に視線を戻した。

本の中には神殿のある島の場所と神殿の簡単な絵。
そして、辺りを探索した結果が書かれていた。

「美しい島に、美しい神殿…か…」

「ばあちゃんが言ってたのと同じだな。」

それはかなりの熱を入れて書かれてある。
しかし、肝心の中に入る方法わからない。
どこにも、記されていないのだ。

「本当にこの著者はお宝を発見したのか?」

「神殿の外観だけでわかるわけないし…
ちょっと待って!この最後の文章見て!」

文の最後の一行。
これが3人の好奇心を揺さぶった。

―ここにある宝は、私の鞄には入れることはできない、それに値する人物がこの世のどこかにいることを祈ろう―

「よぉっしゃ!あるぞぉっ!お宝はここにあるっ!」「やったぁっ!」
「よし。」

確信した、お宝は必ずある!

声を上げて喜ぶ3人に周りの視線が突き刺さる。
ニーナは真っ赤になって、リュートの頭を叩いた。

「いてっ…なんだよ…」

「うるさい。静かにしなさい。」

「お前だって叫んだだろ?」

「あんたにつられたの!」

「…はぁ…」

3人は海宝堂。
この3人が図書館にやって来たのは、1人の女の子との出会いからだった。
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