海宝堂〜海の皇女〜
来た廊下を戻っていると、角でガル達にぶつかった。

「みんなっ!」

「シーファっ?
どこに行ってたの?それにそんなに焦って…何があったの?」

「訳はあとで話すから、すぐにここを離れましょう。
準備は…出来てるみたいね、じゃ、私の荷物取ったらすぐに…」

部屋に戻ろうとするシーファの腕をニーナが掴む。

「ここを離れるって…そんな急に…少しは落ち着いて。」

「そうだぞ。俺はもうちょい、ここに居たいしよ…」

「ニーナ、リュート!お願いっ!時間がないの。」

真剣な顔で懇願するシーファに2人は言葉を無くした。
シーファは嫌な予感で一杯だった。
トイスで振り払ったはずのモノに、また足元から巻き付かれていくような、そんな嫌な予感を感じていた。

ガルが無言でシーファの手を取った。

「ガル…」

「ここを発つんだろ?」

ガルがシーファの手を引き部屋に向かおうとしたが、その手は引き離された。

2人の横の壁が吹っ飛び、ガルは前方に、シーファは反対側の壁に飛ばされた。

「シーファ!」
「ガルっ!」

目の前で2人が飛ぶのを見て、ニーナとリュートが叫ぶ。

すると、穴の空いた壁の中から、黒い影がゆっくりと姿を現した。
真っ黒なマントにその身を包み、頭はマントと正反対に真っ白だった。

「……どこへ行かれるのですか?その前に私にお付き合い頂いても宜しいですかな?」

倒れるシーファを見下ろして、その男…ヌルドはニコリと笑った。
ニコリ。ヌルドは本当にそう笑った。
嬉しそうに子供のように無邪気に。

「な、なんだお前っ!
シーファから離れろっ!」

「…シーファ?
それはおかしいですね?
この方の本当の名前はシルフェリアのはずですが?」

ヌルドの言葉にシーファは目を見開いて、ヌルドを見上げた。

その表情を見てヌルドはますますその顔を笑みの形に歪めた。

(!!気付いてる!こいつ…もう…)

「ご一緒願えますか?」

ヌルドが手を差し出す。
シーファはその手を払いのけた。
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