海宝堂〜海の皇女〜
「さて、そろそろ決めて頂けますか?
私にお付き合いくださるか、この御2人を見捨てて逃げるか。」

ヌルドはシーファの目を見据えた。

「行きなさいっ!あなた達を巻き込みたくはないのですっ!」

「ガルっ!シーファを連れて行けっ。」

セイドとアリアが叫ぶ。

ガル達は未だ、全てを理解できていなかった。
奴らは何故かシーファを連れていきたがっている。
セイド達は自分の身もかえりみず、逃がそうとしている。
何故、シーファを求め、何故、シーファとの関係を否定するのか…?

――紋章――

この二文字が脳裏によぎる。

ガルはシーファの手を掴む。

「俺達は無関係だ。
リュート、ニーナ、行くぞ。」

「あ?え?おい…」

「いいから、行くの。」

戸惑うリュートの背中をニーナが押した。

ガルに腕を引かれ、ちらりとセイド達を見る。
2人は小さくうなずいた。

しかし――
すんなりと行くことは出来なかった。

「…ビュウ。」

ヌルドがそう言うと、鎧の優男が大男にセイドを渡し、見えないほどの速さで、ガルの前に立ちはだかった。

「…なっ!速すぎ…」

ガルはさっと自分の後ろにシーファを隠す。

「…渡せ。」

「何度も言わせるな、俺達は無関係だ。」

ガルが言い終わったと同時だった。
ガルとビュウ。2人の間に火花が散った。
ビュウの長い剣を間一髪、地変で受け止めていた。

「ガルっ!」

ギリギリと2人の力が均衡を保つ中、ニーナが弾火に手を伸ばそうとする。

「うぉぉぉおおおっ!」

地の底から響いてくるような、叫び声と共に、セイド、アリアを拘束していたはずの大男、アーターがニーナ達に突進してきた。

「き、きゃあぁぁぁっ!」

大男の腕にとらえられ、ニーナ、リュート、シーファはいっぺんに壁に押し付けられた。

その馬鹿力に壁は崩れ去り、壁の向こう、大きな部屋に雪崩れ込んだ。

「シーファっ!ニーナっ!リュートっ!」

気をとられた瞬間、ビュウの剣がガルの頬を切り裂いた。

「…首を狙ったのに…」

ビュウは無表情でそう言った。
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