海宝堂〜海の皇女〜
…身体中が痛い…

指を一本動かすだけで、息を少し吸い込むだけで、身体中が悲鳴をあげた。

何が起こった?

痛みで朦朧とする頭を必死で使い、何があったか、思い起こす。

巨大な体に、制御なしの力。
目にも止まらぬ速さに、容赦ない技。

―そうだ…奴ら…やられたの…か…―

ガルはゆっくりと目を開く。
どのくらい気を失っていたのか、まだ冷たい床の上に寝転がっていた。

―リュート…ニーナ…―

仲間の名前を呼ぶ。
ぼんやりと向こうに倒れているのが見える。
殴られすぎで目が霞む。

―………シーファ…
くそっ……がっ…―

もう一人の仲間はいない。連れ去られるのを、黙って見送ってしまった。

最後に見た顔はとても辛そうだった。
あの時のように…また、彼女を傷つけた。
目を合わせてやれなかった、不安の海に突き落とした。

もう二度と、置いていかない、ずっと一緒だと伝えてやらなければ。

例え、彼女が何者であったとしても。

―…助けに…行くぞ…―

2人の仲間に声をかける。
しかし、2人は動かない。

痛む体を動かして、少しずつ這って、2人に近づく。

―おい…起きろ…リュート…ニーナ…
……………………?―

動かない。
肩を揺すっても、声をかけても、2人は目を閉じたまま、ぴくりともしない。

全身の血が急に引いていった。
身体中が震え、涙が頬を伝った。

今まで旅をしてきた仲間の死が、目の前にあった…
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