海宝堂〜海の皇女〜
「ガルっ!先生呼んできたよっ!」

ニーナが医者を引っ張って戻ってきた。
かなり焦ったのだろう、文字通り引っ張られた医者は、ニーナの後ろで息を乱し、ボロボロになっていた。

「……俺は大丈夫だ…
とりあえず、先生を離してやれ。」

ガルに言われ、医者の状態に気付いたニーナは慌てて頭を下げた。


「全く…心配させて…」

医者に診てもらった後、ニーナはガルのベッドに腰をおろしてやっと一息ついた。

「ああ、すまなかった。
それで、セイド王とアリア王妃は?」

「うん、ガルが起きたって伝わってると思う。
2人共、すごく心配してくれた……シーファがさらわれて、一番辛いのに…」

しん…とする空気の中、ドアをノックする音が響いた。
ドアが開き、セイドとアリアが姿を見せた。

「目が覚めたようで何より…」

「体はもう大丈夫ですか?」

体を起こそうとするガルを手で優しく制して、2人はベッドに近づいた。
2人の顔色の方が心配だ。

「王様、詳しく話してもらえますか?」

セイドはゆっくりうなずくと、これまでのいきさつを話し始めた。

ヌルドが言っていた事は真実だった。
シーファはこの皇国の皇女だった。
シーファが生まれた時のヌルドの恐ろしい計画。
それから逃れるために、シーファをトイス王国に逃がした事。
満月の夜、戻ってくるという予言。
名乗らず城を離れさせるつもりが、我慢できなかった事。
シーファに話した全てを3人にも聞かせた。

ガルとニーナはほとんど予想がついていたので、理解も早かったが、ただ、1人だけ…

「……………………………………………………え?」

リュートだけは全くの予想外の話で、もう驚くことすら出来ずに呆然としていた。

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