海宝堂〜海の皇女〜
ビュウは目を丸くした。
もう固められるものなどないはずだ。
しかしこうして剣が作り出されている…

頭の上で構えられるその剣を持つ腕から、ポタポタと血が流れる。

ビュウははっとした。

その顔を見てガルはニヤリと笑う。

「…そうだ。この剣は俺の血だ。
垂れてくるのを徐々に固めてたら、案外時間がかかってな…結構やばかったな…」

「まさか…これを狙って、わざと腕を斬らせ…?」

せめぎ合う剣を挟んで、お互いの顔を見つめ合い言葉を交わす。

「ああ、お前が言ったんだ。
打撃じゃお前は倒せねえ、ってな…」

ニヤリと笑うガルとは対称的にビュウの顔は歪み、ぐっと全体重を剣にのせる。

「――くっ…結構な力だな…技だけかと思ったら…」

「はっ…そんな急ごしらえの偽物の剣で、やりあえると本気で思っているのかぁっ!」

ビュウの押しやる力がぐんと増す。
ガルも負けじと堪えるが、斬られた腕では長くはもたない…

「このっ!しぶとい…っ

――死ねっ死ね死ね、死ねぇぇぇぇっ!」


ビシッ…

石でできた剣にヒビがはいる。
その瞬間、ビュウは喜びに震えた。

「やっぱり…そんな剣で耐えられる訳はないんだぁっ!」

ビシッ!ビシッビシッ―

剣が砕け、ビュウが勝ったと確信したと同時だった。

ビュウの体がビクリと硬直した。
ビュウの剣はガルの肩で止まっている。

「…石は砕けても、本体があるんだよ…」

石が剥がれた地変の本物の刃が、ビュウの首に深く刺さった。


「…生き…たい…という心………強かっ…た…のは…お前……と…いう…こ…」


ゆっくりと倒れ、ビュウはそのまま動くことはなかった…
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