海宝堂〜海の皇女〜
「ダメだ!あいつ、鈍すぎて雷流効かねえよ!」

リュートの頭にニーナの拳が落ちる。

「バカか、お前はっ!

一度や二度、効かなかったくらいで諦めるなっ!

集中するのよ。
雷流の力を集中して、研ぎ澄ませるの。
あいつの体に入り込んでいく感じをイメージして。」

「入り込んでいくイメージ……集中………」

リュートは深く深呼吸すると、頭の中でニーナに言われた事を思い描いた。

ピリピリと雷流を持つ手にエネルギーが集まっていく。

「よっしゃ!イケるぜ!」

リュートはもう一度走り出し、アーターの腕に雷流をからめ、電流を流した。

「――ウォっ!」

アーターの体がビクンっと硬直する。

それをニーナが見逃すはずもなく、素早く弾火を取り出し、一発撃ち込むとすぐにホルスターに戻した。

アーターはすぐさま元に戻り、腕を振り回す。

「リュート!すぐに離れるの!」

「ああ!でも、なんで…?」

「いいから、黙って続けて!」

ニーナに言われるがまま、リュートは、攻撃を避けつつ近づいて、雷流で動きを止めるのを続けた。

ニーナはリュートが動きを止めた一瞬だけ、弾火を出し、一発撃ってはすぐ戻すのを続けた。

それを繰り返す内、リュートにもニーナの考えが分かってきた。

(アーターは火に敏感、火を使おうとすると脅威的な速さで襲ってくる。
でも、普通の時なら、避けられないことはない。
その上、巨体だから隙が出来やすい。
火を使わない雷流なら、捉える事ができる!)

大きな手が今度は壁を破壊した。
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