海宝堂〜海の皇女〜
すかさず雷流を巻き付け、一瞬、動きを止める。

そこにニーナが弾火を撃ち込む。

(一瞬、俺がこいつの動きを止めれば、一瞬だけニーナが弾火を撃てるチャンスができる!

そして、火に反応する前に弾火から手を放しちまえば、こいつの火センサーには引っ掛からねえ!

ニーナのすげえ集中が一瞬の早撃ちを可能にしてるんだ!)

リュートは嬉しそうにアーターの周りをちょこまかと動き回った。

アーターはなかなか捕まえる事が出来ないリュートに次第にイライラを募らせていく。
攻撃がより乱暴になり、一撃で決めてしまおうと大振りになっていった。

そうなれば、リュートがかわしやすいことも知らないで…

「うがぁあああああっ!」

アーターの叫びがビリビリと振動を生む。

「うわっ!」

リュートがその衝撃にバランスを崩したのをアーターは見逃さなかった。

リュートがアーターから目を離したその隙に、アーターはリュートとの距離を一気に縮めた。

「!リュートっ!」

ニーナが叫んだ時はもう遅い。
なぎ払うように繰り出された平手は、まともにリュートの横っ面を捉えた。

「――…っ…かはっ…」

衝撃に息が止まり、壁まで吹っ飛ぶ。

アーターがニヤリと口端を吊り上げた。
その巨体を揺すって、リュートに近づいていく。

―シュンっ!

アーターのまぶたを何かがかすった。

「――っ!がぁあああああっ!」

アーターは目を押さえ、激しく暴れだした。

ニーナが放った弾火だった。
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