海宝堂〜海の皇女〜
「だめえええぇぇぇっ!」

エネルギーが放たれようとした瞬間、シーファは人魚が本来持つ、泳ぎのスピードで正面に回り込んだ。

そして、その体をもって、トライデントのエネルギーとその切っ先を受け止めた。
切っ先はシーファの体に突き刺さり、辺りは目が開けていられないほどの閃光に包まれた。


「シーファあああああっ!」

「やだ…うそでしょ…そんな…」

閃光が次第に薄れ、シーファの姿がはっきりと見えるようになっていく。

血の気が引いていく。
立っているのもやっとだ。

ヌルドはその場でこちらを見下ろし、シーファの体からは力が抜け、ぐったりとそこに浮かんでいた。


「……………………」


これだった…この城に来たときから感じていた嫌な予感…
大切な、大切な何かを失う予感…

ガルは呆然と変わり果てたシーファの姿を見つめた。

「うっ…うぉおおおおおぉっっ!」


「いやだ…こんなのいやよぉっ!」

リュートとニーナの目から涙がこぼれおちる。
もう、シーファの姿を見ることすら出来ない。

セイドも涙を流して床を叩いていた。


シーファの向こう、無事に見えるヌルドが動く。

手を伸ばし、シーファに触れようとしているようだった。

「………めろ…
ヤメロっ!シーファにさわるなぁっ!」

ガルが叫ぶ。

ヌルドの体が震え始める。ガクガクと全身が痙攣しはじめると、足から泡が出てきて、それが全身を覆い、ヌルドは跡形も残らず、消えてしまった。

戦いの終末…余りにも残酷な終末…
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