海宝堂〜海の皇女〜
怒った男が振り上げた拳は女を確実に捉えていた。
しかし、その拳は綺麗に空を切った、びゅんっ、と音を立てて。

「なっ…………ぐっ!!」
驚きに顔をゆがめた男は、次の瞬間、痛みに顔をゆがめていた。
女は拳をかわしながら、男の腹に蹴りをくらわせていた。

「おお〜やるな、あの姉ちゃん。」

止めに入ろうとしていたリュート達の足が止まり、リュートは感嘆の声をあげた。

「ちょいと、あんた達、この子はここら辺ではかなり強いんだよ、やめときな。」

店の前で乱闘騒ぎは困ると、店のおばちゃんが忠告すると、男達はまだ ダメージの残るリーダーを支えて逃げていった。
当然、悪者お決まりの『おぼえてろ!』と、さけびながら…。

「おばちゃん、ありがと。ごめんね?」

「いいんだよ。それにしてもあいつら、ここら辺じゃ見かけないねぇ…
最近、ああいうのが増えたって、村長さんが頭を悩ませてたよ。」

「柄の悪いゴロツキか…」
「あんたの蹴り、凄かったな!」

騒ぎが収まって、ガル達が歩み寄る。

「あ、荷物、ありがとう。」

女はリュートから荷物を受けとると、笑顔を見せた。

「おばちゃん、柄の悪いのが増えたって、何か原因でもあるの?」

ニーナがおばちゃんに話の続きを聞く。

柄の悪い奴らというのは、儲け話に群がるものだからだ。運がよければ、神殿への道が繋がるかもしれない。
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