海宝堂〜海の皇女〜
「さっきのスリも、そいつらの仲間か?」

「スリ?なんだそれ。」

「後で話すわよ。それより今は…」

「原因ねぇ…あたしにはそんな心当たりはないけどねぇ…………………ああ!まさか…でも…あらまぁ…」

ニーナの視線に、最初は首を捻っていたおばちゃんが急に何かを思い出したようにつぶやき始めた。

「何か心当たりがあるの?なら、教えて!」

「でもねぇ〜あんた達だってここらじゃ見かけないし…」

「俺達とさっきの奴らと一緒にしないでくれよ。俺達は誇り高き『海宝堂』なんだからよ!」

えへんと胸を張るリュートをニーナは突飛ばし、おばちゃんに詰め寄る。

「こいつの言うことはともかく、私達は正義に反することはしません。だから…」

それでもまだ疑いが抜けないおばちゃんに女が言った。

「大丈夫よ、この人達は悪い人じゃないわ。私が保証するから。」

「そうかい?シーファちゃんがそういうなら…」

「ありがとうっ!」

「いいえ。
さあ、私は帰らなきゃ。皆がご飯を待ってるだろうから。
じゃあね、『海宝堂』の皆さん。」

女が背を向けると、ガルが止めた。

「あんた、名前は?」

「シーファよ。まだこの街にいるなら、またね!ガル。」

シーファは大きく手を振って、走っていった。

「シーファ……なんで俺の名前…?」

「さっき、リュートが海宝堂の説明してるとき、名前も話してた。
………良かったわね、『また』だって。」

「ヒヒヒ…………いでっ!なんでだよっ!」

ニヤニヤ笑うニーナをガルは睨み下ろし、リュートには拳が落ちた。
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